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第二話

勝海と男は機体から降りていた。普通、機体から降りようとした場合 ペナルティで強制送還されるはずだ。

そうすれば戻れるのではないかと二人で相談し、実行した結果、普通に外に出られた。
ペナルティが発動する様子は全くない。

アームドロイド越しではなく、初めて電脳空間の世界へと足を踏み入れた二人。
地面を踏みしめる感触、風が頬を撫でる感触などは現実世界と変わらなかった。

「なあ、どうするよ?外に出られるのは良いけどよ、このまま歩いてくの面倒じゃね?」

勝海が口を開いた。元の世界に戻れない以上、しばらくはこの世界に留まるしかない。
しかし、周囲の土地勘が全く無い上に、周囲を見渡す限り人が住んでいる気配はない。

そもそもこの世界に人が住んでいるかさえ疑わしい。対戦等で一時的に人が行き来する 事はあるだろうが、この世界に人間が住み着いているという話は聞いた事がない。
仮に居たとして、恐らくこの世界において主な移動手段であろう二人のアームドロイドは 片方は腕をもがれ、もう片方に至っては大破して行動不能ときている。
彼はともかく勝海は探しに行くのも困難であろう。

「僕の機体は左腕を失っただけだ。まだ動ける」

そう言うと男はコマンド・ブルに乗り込み、そのまま歩き始めた。

「オイちょっと待て!俺も乗せてけよ!!」

慌てて声を掛ける勝海に対し、彼は吐き捨てるように言った。

「嫌だね。君がどうなろうと知った事じゃない。自分で何とかするんだな」

勝海を置いて本当に行ってしまった礼。勝海はただ呆然と見送るしかなかった――――

※※※

気が付けば、葵は簡素なベッドの上に横たわっていた。一体自分はどうなったのだろう?

勝海と礼が戻らないので心配になって、店員を呼んで転送装置のハッチを開けてもらい、 覗き込んだら急に吸い込まれて――――

少し頭がくらくらする。まだあの時の感覚が残っているのだろうか。

「目が覚めたみたいだな」

聞き慣れた声がする。声のした方へ目をやると、文弥が立っていた。

「ここは・・・・どこ? 勝海は!? 勝海はどうなったの!?」

「まあ落ち着けよ、勝海の事も含めてこれから相談しようと思ってたんだよ」

「・・・・どういう事?」

葵は訝しげに尋ねた。表情を読み取った文弥は、自分たちの置かれた状況を 順を追って説明する。

「結論から言うと、勝海はまだ出てきてない。そして俺達も電脳世界に転送されて、 帰って来れなくなっちまったんだ」

改めて現実を突き付けられ、葵の表情に焦りの色が見えた。
文弥は葵を心配しつつも説明を続けた。

「だが幸いな事に、この世界にも人が住んでる事がわかった。 勝海達も、もしかしたら向こうの人に保護されてるかも知れん。まだ希望はあるさ」

確かにその通りだ。ベッドがあるという事は、それを作った人がいるという事だ。
そう考えると、少しだけ気持ちが楽になった。

「あら、そっちの子も起きたのね?気分はどう?」

話しているのを聞いていたのか、ドアを開けて一人の女性が部屋に入ってきた。
年の頃は20代前半のように見える。

「紹介するよ、この人が俺等を助けてくれたフレンダさんだ」

「あ、園崎葵です。助けて頂いてありがとうございます・・・・」

「よろしくね、葵ちゃん」

そう言ってフレンダは手を差し出した。葵も手を出して軽く握手を交わした。

「・・・・で、どこまで話したっけか?」

「確かここが電脳世界の中で、ここにも人が住んでるってトコまで聞いたはず」

話を戻す文弥と葵。そして話に加わるようにフレンダが話す。

「よく分からないけど、あなた達は『向こう側』の人達なのね?それが恐らく、 何かの手違いでこの世界に呼び出されてしまったと」

「向こう側って・・・・」

「あなた達の他にも、過去にそういう話があったのよ。その時は別の世界があるなんて 誰も思ってなかったし、皆その人をただの危ない人扱いしてたけど・・・・ここ何年かで そういう事件が多発して、それでお上が調査にのり出した所、こことは別の世界―――― あなた達からすればこっちが異世界なんでしょうけど――――がある事が確認されたの。 だからあなた達もその一人なのよ。同じ世界の人かどうかまでは知らないけどね」

「ちょっと待って下さい!異世界ってそんなにたくさんあるものなんですか!?」

葵は驚きの余り、素っ頓狂な声でフレンダに尋ねた。その直後、自分の声を聞いて 急に恥ずかしくなり、顔を真赤にしてうつむいた。

「さぁ?そこまでは分からないわ。そもそも他に異世界があるかどうかも分からないし、 今政府が調査中らしいけどね」

少しだけ、この世界のことが見えてきたような気がした。しかし、おかしい点もある。
もしそんな騒ぎが起きているなら、何故自分達のいた世界では何故そんな情報が 入ってこないのか――――本当に自分たちの知らない世界が別に存在するのか、 あるいは――――文弥と葵は考え込んだ。

「けど、良かったわね。最初に着いた場所がこんな辺鄙な村で。 これが都会の方だったら色々大変だったわよ?」

「そうなんですか?」

フレンダの言葉を聞いて、訝しむ葵。

「そうよ?異世界からの人間なんて珍しいでしょうし、技術提供を強要されたり、 身ぐるみ剥がされて軟禁されたり、最悪の場合兵器とかの研究のモルモットに される場合もあるらしいわよ?この世界の人間を使うより良心が痛まないからって」

身の毛もよだつような話を聞かされ、戦慄する二人。

「でもまあ、誰かがあなた達の事を吹聴して回らない限りはそんな事もないわ。 そんな物好きもいないしね。きっと大丈夫よ」

「そうですか・・・・で、さっきここを辺鄙な村って言ってましたけど、 ここはなんて所なんすか?」

フレンダに向かって疑問を投げかける文弥。

「そうね、あなた達にはまだ地名すら言ってなかったね」

一拍置いて、フレンダは二人に向かってこう言った。

「ようこそ、トアル村へ――――」

フレンダの微笑みに何故か安心感を覚えた文弥と葵。
その表情にも僅かに笑顔が戻った。

しかし、安心すると今度は腹の音が響いた。
そういえばこの世界に来てから何も口にしていない。

そもそもこの世界にきてどの程度時間が経過したかも把握していない。
否、そんな事はどうでも良い。とにかく二人は食料が欲しかった。

二人の腹の音を聞いたフレンダが笑いながら言った。

「二人ともよっぽどお腹空いてるみたいね。良いわ、何か持ってくるからそこで待ってて」

フレンダが戻ったあと、二人は最大の疑問を口にした。

「「この世界のものって、俺(私)達が食って(食べて)も大丈夫なの(か)?」」

ここが電脳世界であるということは、この世界のありとあらゆる存在がデータである。
問題は異世界の存在である自分達がそれを口にできるのか、万が一口に出来たとして、 その後どうなるのか、という事だ。

自分達もデータの塊になった可能性を考えれば、ここの食料を口にしても 問題ない可能性もある。

しかしそれはあくまでも可能性であり、必ずしも害がないとは言い切れない。
そもそも食べられない可能性だってあるのだ。

しかし、腹が減るという事は、このまま何も口にしなければ飢えて死ぬという事であり、 結局は試す以外に道はないのだ。

「お待たせー。適当にパンとかサラダとか詰めてみたんだけど、これでいい?」

「あ、ありがとうございます・・・・」

見た目は普通と何ら変わりないパンとサラダだ。しかし空腹のせいか、普段目にするより も美味しそうに見える。二人は覚悟を決め、パンを一掴みして、一気にかぶりついた。

美味だった。

その表面はカリッと仕上がり硬すぎず、尚且つ中身はふっくらとしていて弾力があり、
もちもちした歯触りが心地良い。

サラダの方もシャキッとしたレタスにトマトなどの口の中に広がるほのかは酸味が 恐らくは事前に振ってあったのであろう塩の味と見事にマッチしており、二人の食欲を 凄まじく刺激する。

サラダとは言うものの、塩を振っただけの野菜をここまで美味しく感じたのは 共に初めてだった。

二人はパンとサラダを交互に口に運ぶ作業をひたすらに繰り返していた。

「そんなに慌てなくても逃げはしないわよ。今スープを持ってくるわね」

フレンダは微笑みながら部屋を後にした。

※※※

あの男に見捨てられてからどれ程時間が経っただろうか――――

勝海は焦りと空腹ですっかり気が滅入っていた。

初めは勝海もアテもなく歩き回ったものの、アームドロイドもなしに歩き回るには広大 すぎるようで、体感時刻でおよそ30分が経過する頃には全く同じ景色ばかりが続くのに 心底うんざりし、同じだけの時間をかけて元いた場所に戻ってみるも、着いた頃には 腹の中はすっかり空っぽでこれ以上は歩く気力さえも失っていた。

この世界に来る際に乗っていたラプターにもたれかかり、もはや生気を失った瞳で 呆然と景色を眺めていると、そこに何かが浮かんだ。

こっちに向かって動いている。人だろうか?
否、人にしては異様なフォルムで、頭がない。それに僅かながらアームドロイドの 駆動音らしきものも聞こえる。

これらの情報をすっかり弱った頭で必死に整理した結果、勝海は 飛び上がるような勢いで起き上がり、そのアームドロイドに向かって手を振った。
運が良ければ、助けてもらえるかもしれない。

「おーい、助けてくれー!俺のアームドロイドが壊れちまったんだー!おーい!!」

恐らくは勝海の願いが通じたのだろう。アームドロイドのキャノピーが開き、
勝海に向かって手を振り返す人間の姿があった。

やがてアームドロイドは勝海のラプターの元へと辿り着き、パイロットが降りて来た。
中から現れたのは見た感じでは15〜16歳、勝海と同い年か1つ年下ぐらいの 小麦色に日焼けした肌を持つ黒髪の女の子であった。

「うわーこりゃ派手にやられたねぇ!一体どんな戦い方したのさ?」

溌剌としゃべる少女に、勝海は頭を掻きながら答える。

「いやー戦った相手が滅茶苦茶強くてな、頑張ったんだが全然歯が立たなくて ご覧の通りボッコボコにされちまったぜ。お陰でまともに動けなくてよォ、 どこ行っていいかも分からんし、困ってたんだ」

「そんなに強い奴だったんだー、出来れば会いたくないもんだね、そんな奴。 あ、ボクはリンファ。こっから東の方にあるトアルって村で整備士やってるんだ。 キミは?」

「俺は勝海。木戸勝海ってんだ。よろしくな!」

「よろしくカツミ!で、この子を直すならボクについてきて欲しいんだけど・・・・ 中身もだいぶイカれちゃってるね。エンジンだけはこの場で何とかできるし、 それからこの子に乗ってついて来てもらう形になるけど、イイよね?」

「おうよ!よろしく頼まァ、リンファ!と、その前に・・・・」

「ん?どったの?」

勝海はすっかり空っぽになった腹を擦り、バツの悪そうな顔をして言った。

「ここに来てから何も食ってなくてな、なんか食いモンあったら分けてくんね?」

腹の底から凄まじい音が響き渡る。リンファは苦笑し、機体のバックパックから携帯食料 を取り出し、勝海に向かって放り投げた。

危うく落としそうになりつつも、何とかキャッチする勝海。

「向こうの世界から来た人でも食べられるから安心しなよ。キミ、向こうの人でしょ?」

リンファからそう言われ、自分が電脳世界から出られなくなったことを思い出した。
漠然とした不安が頭をよぎるが、自分達以外にも人がいることが分かり、希望も出てきた。

二人は程なくして打ち解け、応急処置が終わり次第、トアル村に向かう事となった。
その場凌ぎではあるが一応動かせるくらいにはなったので、勝海はラプターに乗り、 そのままリンファについて行った。

改めて見ると、リンファの機体は変わっていて、少なくとも、ゲームの中では一度も 見た事がない機種だった。まず脚部が通常の機体のような二足歩行型ではなく、昆虫の ように六本の足で体を支えており、恐らく他の機体より走破性に優れていると思われる。

そして作業用なのか、左右腕部は通常の腕部とは別にサブアームが追加されていた。
背面にはクレーンが装備されており、そこだけを見れば工事現場等でよく使われる アポロンと似ていると言えなくもなかった。
胴体中央には、申し訳程度に小口径のバルカンが備え付けられている。

「おめーの機体、変わってんな。多脚のアームドロイドなんて俺、初めて見たぞ?」

「そうかい?ボク、向こうの世界ではどんなのが使われてるかなんて知らないから、 よく分かんないや」

「そうか・・・・それにお前、よく俺がこの世界の人間じゃねぇって分かったな」

「アームドロイドでドンパチやるなんて、兵隊や山賊以外じゃキミ達ぐらいだからね。 騎士や傭兵って雰囲気でもなかったし、じゃあ向こうの人かな、って」

「へぇ・・・・」

勝海は村に着くまでの間、この世界に関する事をリンファに色々と聞いていた。
ただ歩くだけでは退屈だからと、彼女も勝海の質問に答えていた。

逆にリンファから勝海のいた世界のことを聞かれ、勝海もそれに答えもしていた。
そうして時間を潰していると、リンファの言う村が見えてくる。

「おー見えてきたー。カツミー、あれがトアル村だよー」

「あれがそうなんか。着いたら早くコイツを直してやんねぇとな」

「そうだね。あ、アームドロイドで村の中へは入れないから、 村の外にある駐機場に停めてね。ボクの工房は駐機場の隣にあるから」

「おう、分かった」

勝海とリンファが話していると、地響きと共に村から黒い煙が上がった。

「おい!?何が起こったんだ!?」

「分からない、もしかしたら山賊に襲われたのかもしれない!」

「何にせよ、急がねぇとな!」

「うん!」

不穏な気配を感じた二人は、機体を通常モードから戦闘モードに切り替え、 移動速度を上げてトアル村へと向かった。

※※※

文弥と葵は、突如バラバラに吹き飛んだ家屋と、そこから立ち上る黒煙、 そして、その奥から現れた六機のアームドロイドを呆然と見つめていた。

襲撃者の機体はプルートが二機、バジリスクとアポロン、そしてタイタン が各一機ずつ。残りの一機は、見た事のない機種だった。

外にはパニックになり逃げ惑う住民達がいる。

しかし、アームドロイドは村人達を阻むように移動し、あっという間に取り囲んだ。

「何これ・・・・どうなってるの!?フレンダさんは無事なの!?」

「分からねぇ・・・・けど、ここに居ちゃ危険だ!どっかに隠れる場所は――――

文弥が途中まで言いかけた時、緊迫した面持ちのフレンダがやって来た。

「あなた達、無事だったのね!?」

文弥と葵の無事を確認し、安堵するフレンダ。しかし、安心している暇はない。
フレンダはすぐに表情を元に戻し、二人を裏口に案内する。

「こっちよ!あなた達が異世界の人間だとバレたらどうなるかわからないわ! 私が時間を稼ぐから、あなた達は裏口から逃げて!」

「でも、それじゃフレンダさんが――――

「私の事はいいから早く!!」

フレンダは二人を外に連れ出し、鍵を掛けた。六機のアームドロイドのうち、 リーダー格と思しき機体の外部スピーカーからノイズ混じりに男の声が聞こえた。

「このあたりから武装以外の転送反応があったんだが、知らんかな?お嬢さん」

「残念だけど、私は何も知らないわよ?あんた達が何を探してるのか知らないけど、 こんな辺鄙な村にあんた達の探し物なんて無いわよ!さっさと出ていって!」

フレンダが叫ぶと、リーダーの機体が空に向かってマシンガンを撃った。
辺りに爆音が響き渡り、フレンダは耳を塞いだ。

この村の村長らしき初老の男性がリーダー格の男に向かって懇願する。

「もうやめてくれ!!ワシらが一体何をしたと言うんじゃ! ただワシらは平和に暮らしたいだけだというのに・・・・」

「そいつぁ残念だったな、爺さんよ。この村に異世界の人間が紛れ込んでるはずだ。 知らねぇとは言わせねぇ。死にたくなきゃそいつらを探し出して俺等の前に差し出せ。 村人どもは開放してやるから一緒に探せ。くれぐれも妙なマネはすんなよ?」

村人達を開放する代わりに、「逃げたら撃ち殺す」とでも言わんばかりに村人達に
武器を向けるアームドロイド達。村人達は必死で異世界の人間を探し回った。

「ホラお前もさっさと探しに行けよ」

アームドロイドのうちの一体がフレンダに銃を突き付けた。

「お断りよ!あの子達を売るくらいなら死んだ方が百倍マシだわ!!」

「そうかい。ならお望み通り殺してやるよ。それとも春売って暮らす方がお好みかい? 久々に上等なタマだ、好きな方を選ばせてやる」

他のアームドロイドからも機体越しに男達の下卑た笑いが聞こえてくる。

「文弥、私・・・・」

葵が言いかけたのを遮り、諦めたような表情でため息をつく文弥。

「ハイハイ分かってますよ、お前の事だしそろそろ言い出すんじゃねえかと思ってたよ。 昔っから言い出したら聞かねぇしな」

「ごめん、でもありがとッ!」

「そうだよな、これ以上フレンダさん達に迷惑はかけられないもんな」

「うん・・・・行くよ!!」

「「ちょっと待った!!」」

隠れていた草むらから身を乗り出し、葵と文弥が姿を表した。

「あなた達、何で逃げなかったの!?」

もうすっかり逃げたものと思っていた二人が現れ、フレンダは叫んだ。

「すみません、フレンダさん・・・・これ以上村の人達に迷惑はかけられませんから」

「そうそう、あなたに逢えた事こそが俺の最大の――――いでッ!」

文弥が言いかけたところにすかさず耳を引っ張り上げる葵。

「馬鹿なこと言ってないで、さっさと行くわよッ!!」

「ハッハッハ、命拾いしたな、嬢ちゃんよォ。よし、こいつらを回収しろ」

リーダー格の男が命令し、二人の男が機体をしゃがみ込ませ、キャノピーを開ける。 男達は二人に手を差し出しつつも、もう片方の手に拳銃を握っており、その照準は しっかりと二人に向けられていた。

そして、二人がアームドロイドに近づいたその時――――

「ボス!! 後方から二機のアームドロイドの反応が!!」

「何ィ!?」

この瞬間、彼等全員が後方に気を取られた。このチャンスを逃す手はない――――
瞬時にそう判断した葵と文弥は渾身の力を込めた一撃を男達の顔面に見舞った。

咄嗟の出来事に反応しきれず、機体から投げ出される男達。そして、二人は それぞれバジリスクとアポロンのコックピットに急いで乗り込み、キャノピーを閉じた。

「クソッ、ドジ踏みやがって!!撃てェーーーーッ!!」

残りの機体が銃を構えると、そのうち二機が勢い良く吹き飛び、うつ伏せに倒れた。 被害を免れた残りの二機が振り返り、銃を構える。先程現れた二機のうちの一機だった。 そしてもう一機はその少し後ろから小型バルカンを構えている。

「なるほど、さっきの黒い煙はこいつらの仕業か・・・・」

外部スピーカー越しに聞こえる声に、葵と文弥はすぐにピンときた。

「「――――勝海ッ!!」」

村を助けに来た二機のアームドロイド。その内に一機は、装甲がひしゃげ、 すでに刃毀れし、単なる鉄塊と化したブレードを担いだラプターだった。